2024年6月30日日曜日

単位の話

パラメータの単位

Revitでは単位は厳密に管理されています。パラメータの型は特殊な例を除き

  • Double(倍精度浮動小数点)
  • Integer(整数)
  • ElementID(要素ID)
  • String(文字)

の4つの型で保持されますが、このうちDoubleについては、保持されている数値を指定した単位に変換してUIに表示するようになっています。

管理タブ>設定パネル>プロジェクトで使う単位

単位換算は不要

指定した単位にRevitが換算してくれるので、ユーザーは単位換算のための式を設定する必要は一切ありません。例えば、3000mmと3mは同じ値ですが、m表示するために3000÷1000のような式を設定する必要はない、ということです。

表示される単位がことなるだけ

計算式では単位に注意

このような単純な例はわかりやすいのですが、パラメータの値に式を設定するときはしばしばこの「単位換算不要」の考え方を忘れがちになります。例えば速さを距離と時間のパラメータの値から求める場合は、単純に「速さ=距離÷時間」とだけ考えます。

例として壁の長さを時間で割り算する集計表を作ってみます。時間を表すフィールドをデータ型「時間」で作成します。このとき時間の単位は指定しません。

データ型「時間」
そして計算式のフィールドをデータ型「速さ」で作成します。ここでも早さの単位の指定は不要です。
データ型「速さ」
集計表で時間の値入力すると例えば次の図のようになり、速さが求められます。
長さはミリ、時間は秒、速さはkm/h
長さ、時間、速さの単位はそれぞれミリ、秒、時速となっています。ミリをキロに換算したり、秒を時間に換算する式は不要であることがわかります。

単位を補う機能

このように単位コンシャスなRevitですが、単位が合致しない式を立てると、式に含まれる数字に適切な単位の補正を施してくれます。例えば、次のような式があります。

三菱電機HPより引用

この式では、単位が一致していないのですが、この式にある「20」がポイントです。スペースの集計表で次のような式のフィールドを作ってみます。

明らかに単位は一致していないが・・・
このフィールドの単位は

  • 必要換気表:㎥/h
  • 面積:㎡
  • 一人当たりの面積:㎡

で計算式側に ㎥/h が不足しています。しかし、OKを押すとそのまま受け入れられます。もう一度計算式フィールドを編集すると

係数20に不足していた単位が補充されている

20に㎥/hが補充されています。

単位がない場合は換算式必要

もう一つの例を見てみます。

換気回数(回/h)=1時間の換気量(㎡/h) / 室の容積(㎡)

回/hという単位はRevitにはないので、これを実数で求めてみます。同じようにスペースの集計表で、次のような計算式を作成します。

このままだと単位が一致せずエラーになる

指定した換気風量は㎥/hで、容積が㎥なので、結果は 1/hとなるため単位が一致せずエラーとなります。そこで、× [h] と補充してくれることを期待して先頭に「1*」を設定すると、エラーにはなりません。

1*を追加し、単位補充を期待する
しかし出来上がった集計表をみると、値が変ですね。
換気回数は108÷57.36=1.88…のはずでは???

計算フィールドを再度編集してみます。

「1秒」が補充されている!

すると、先頭に追加した1*が1s*となって、1hではなく1s(1秒)が補充されていることがわかります。Revitからしてみればデータタイプ「時間」が不足しているのだと考えて、データ型時間の基本単位(Revitが内部的に保持している数値の単位)である秒を補充した、ということです。

修正方法は簡単で、1sを「3600s」 または「1h」とするだけです。

1s→3600sに
こうすることで正しく表示されます。
正しく計算される

Revitの単位補充はRevitがもつ単位であればうまくいくのですが、計算の単位がRevitのもつ単位に含まれていない場合は要注意です。値がおかしいなと思ったら、計算式を編集して単位を確かめてください。

2024年6月23日日曜日

標準Dシートと吹き出し

詳細図

みなさんの会社でも標準のおさまりを示したディテールシート集があるでしょう。今回はモデルと直接関係のない標準のディテールシートを吹き出しを使って関連付けてみます。

国土交通省官庁営繕の建築工事標準詳細図5-01に次の図のようなパラペットのおさまりがあります。

国土交通省官庁営繕建築工事標準詳細図から引用

このようなディテールシートを製図ビューに作成するには次の方法が考えられます。

  1. 詳細線分、詳細項目などのRevitネイティブ要素で再作成する。
  2. CADデータを製図ビューにインポートして配置する。
  3. PDF/画像データを読み込んでスケールを合わせる

一部を改造して使用することを考えると1が最も望ましいです。

Revitの製図ビューで再作成するのがベストだが…

一方、過去のCAD資産を活用するならば2ですがデメリットは線の太さや種類が正しく表示されない場合がある、ということです。また非表示に設定したレイヤが表示されたりなど、十分に注意する必要があります。

その点3のPDFやイメージならば線の太さや線種について心配する必要がなく、一番確実でお手軽な方法といえます。この場合ビュー上をクリックして正確な寸法を得ることはできませんが、ディテールシートは仕様の表明であると考えれば大きな問題はないといえるかもしれません。

まず、十分に高解像度な画像(300DPI程度が目安)を作成して、製図ビューにイメージとして読み込みます。この際尺度はもとの詳細図の尺度に合わせておきます。

挿入タブ>読込パネル>イメージ読込
リンクでも構いませんが、リンク切れには注意してください。またクラウドでコラボレーションしている場合は、リンクするPDFやイメージファイルもクラウドにアップロードする必要があります。ファイル管理が面倒ならば読込のほうがお手軽です。

修正|ラスターイメージタブ>修正パネル>スケール で、おおまかに尺度を合わせます。

尺度をだいたい一致させる
このとき、ベクトルベースのPDFを読み込んでいる場合は、スナップを有効にする機能が使用できます。
スナップを有効にする
スナップを有効にすると、PDFといえども線にスナップできるようになります。
PDFなのにスナップできる!

モデルに適用する

  1. 適用先のビューを開き、表示タブ>作成パネル>部分詳細▼>長方形 を選択
  2. 修正|吹き出しタブ>参照パネル>他の参照ビューに✔し、作成した製図ビューを選択
    他の参照ビューにチェックして製図ビューを選択

  3. 適用箇所を2点をクリックして囲み、符号の位置を調整する
    適用先に吹き出しを作成

  4. 吹き出しが選択された状態で、タイプセレクタに製図ビューのビュータイプが表示されていることを確認してタイプ編集ボタンをクリック
  5. 参照ラベルに適切な文字を設定。参照ラベルは例えば標準図であれば「標準」、プロジェクトごとに作成したディテールシートであれば「P」などと、納まりの種別を示すのに役立ちます。もちろん何も設定しなくてもOKです。
    ビュータイプを複製し、適切な参照ラベルを設定

あとはシートに製図ビューを配置すればOKです。

2024年6月8日土曜日

吹き出し記号の仕組み

吹き出し記号はちょっと複雑

前回は吹き出しの簡単な使用方法を説明しましたが、今回は吹き出し記号の表示について説明します。

断面ビューのタイププロパティが表示される

吹き出し記号を選択してタイプ編集ボタンを押すと、断面ビューのタイププロパティが表示されます。このプロパティの中の「吹き出しタグ」と「参照ラベル」が吹き出しに関係しています。

吹き出しタグの[...]ボタンをクリック

吹き出しタグの値を選択して右端の[...]ボタンをクリックします。すると吹き出しタグのタイププロパティが表示されます。

部分詳細記号とコーナー半径の関係

  • 部分詳細記号は注釈記号カテゴリのファミリで、自由に作成することができます
  • コーナー半径は囲み線のコーナーの半径です。

囲み線の色と線種を変更するには?

囲み線の線種や色や太さを変更したい場合は、オブジェクトスタイルで「部分詳細境界」を探してください。例えば次のように設定すると
部分詳細境界と部分詳細引出線

このようになります。

この部分詳細境界カテゴリ表示/グラフィックスの上書きダイアログボックスには表示されません。表示グラフィックスの上書きでは表示するかしないかだけを吹き出しカテゴリで設定できるだけです。

表示/グラフィックスの上書き

部分詳細記号のラベル

部分詳細記号はロード可能ファミリなので、自由にデザインできますが、使用できるラベルは次の通りです。

少々わかりにくいプロパティが並んでいます…

  • シート番号
  • 参照シート
  • 参照ラベル
  • 参照詳細
  • 詳細番号
これらがそれぞれ何を示すのか、を説明します。

シート番号と詳細番号

最初のシート番号と詳細番号は、吹き出しビューが配置されているシート番号と詳細番号です。これはRevitユーザーならば直感的にわかるでしょう。
シート番号と詳細番号

参照シートと参照詳細

参照シートと参照詳細はちょっとわかりにくいのですが、吹き出しビュー側から見て、どのビューに適用されているのか?を示しています。
上の図で言うと、「屋上パラペット(アルミニウム製笠木)」という詳細図は、A101の詳細番号1の断面頭上に配置されてます。したがって次の図のようにプロパティに
親ビュー(断面図)のシート番号と詳細番号を示している


参照シート:A101--------親ビューのシート番号
参照詳細(番号):1--------親ビューの詳細番号
と表示されます。ですのでビュー上に表示することはあまりなさそうなプロパティですね。

参照ラベル

今回はパラペットの詳細を作成しましたが、この詳細図を他の箇所にも適用したいことがあります。そんな時は「他のビュー」を指定して吹き出しを作成します。

  1. 表示タブ>作成パネル>部分詳細▼>長方形
  2. 修正|吹き出しタブ>参照パネル>他の参照ビューに✔
  3. リストから作成した吹き出しビューを選択

  4. 画面上で矩形を描画し、記号を適切な位置に配置する
    記号右の「参照」に注目!

このとき、Revitの建築テンプレートに含まれる詳細記号ならば、右上に「参照」という文字が表示されます。これが「参照ラベル」です。この値は吹き出しのタイププロパティ「参照ラベル」の値で、自由に変更できます。

参照ラベルプロパティ
このラベルは、モデルを下敷きとせず、「他の参照ビュー」に✔をいれてビューを選択した場合にのみ表示されます。これをRevitでは参照吹き出しと呼んでいますが、訳とUIがあまり一致していないので名前はどうでもよいでしょう。

次回は標準ディテールの活用について、です。

2024年6月1日土曜日

吹き出しを使ってみよう!

ディテールとモデルの連携

吹き出しはモデルと詳細を関連付ける機能です。今回はこの機能の具体的な使用方法を見てみましょう。

次のような簡単なモデルを作成し、パラペット部分の詳細図を作成してみます。

モデルは簡単に
まずは断面ビューを作成します。
断面ビュー

吹き出しを作成する

  1. 表示タブ>作成パネル>部分詳細▼>長方形
  2. パラペットの周囲を2点クリックし、吹き出し(Call Out)を作成
    ①-②をクリック

  3. 作成した吹き出しを選択し、記号をドラッグして適切な位置に配置

  4. 吹き出しを選択した状態で右クリック>ビューに移動
  5. ビュースケールを1/10に設定
  6. ビューのプロパティモデル表示をハーフトーンに設定
    ビュースケールを1/10 モデル表示をハーフトーン

  7. ビューのモデル(壁・床など)がハーフトーンで表示されていることを確認してください。
    通り芯・レベルを除きハーフトーンで表示される

ディテールをかく

パラペットのディテールを作成します。使用する要素は「詳細線分」「塗潰領域」「詳細項目」といった2D要素です。参考にしたのは国土交通省官庁営繕発行の建築工事標準詳細図(令和4年改訂)です。
  1. 注釈タブ>詳細パネル>領域▼>塗潰領域
  2. タイプ編集>複製で「RC」という名前のタイプを作成
  3. 前景の塗り潰しパターンをRC(切り取り)などの、コンクリートを示すパターンを選択しOK
  4. マスキングに✔してOK
  5. コンクリートの領域を<中線>で囲んでOK。このとき必ずしもモデルをトレースする必要はなく、必要に応じて面取りなどを加えてください。
    コンクリートの領域に塗りつぶし領域を作成

  6. 注釈タブ>詳細パネル>詳細線分 で適切な線種でふかしの線を作成します。今回はは<隠線>を使用します。
    ふかしの詳細線分を作成

  7. 注釈タブ>詳細パネル>領域▼>塗潰領域
  8. タイプ編集>複製で「モルタル」という名前のタイプを作成
  9. 前景の塗り潰しパターンをコンクリートなどの、モルタルを示すパターンを選択しOK
  10. 70㎜の面が取れるように、三角形の領域を<細線>で作成します。
    三角形の塗り潰し領域を作成

  11. 同様の方法で塗潰領域で防水層を幅10mmで作成します。塗潰領域のタイプ名は「防水層」で、パターンは<塗り潰し>とします。
    防水層を塗潰領域で作成

  12. 詳細線分<太線>と<隠線>でアルミ笠木をスケッチします。
    アルミ笠木を詳細線分で描画

  13. シール材を塗潰領域で作成します。
    1. タイプ名はシール
    2. 塗り潰しパターンは適切なパターンを選択してください。新たに作成してもかまいません。
    3. 半径15mm程度の半円の塗り潰し領域を作成し、防水層の先端に配置します。
    4. 原則としてあとから作成した塗り潰し領域が上になります。不都合がある場合は、選択して前後関係を調整します。
      シールを作成
  14. ビューのプロパティ「モデル表示」をハーフトーンから表示しないに変更します。ハーフトーンで表示されていたモデル要素が非表示となります。
  15. 必要な寸法と注釈文字を加えます。
  16. ビューのプロパティシートのタイトルを「屋上パラペット(アルミニウム製笠木)」とします。
  17. トリミング領域を調整して完成。
    完成


シートにレイアウト

断面ビューと吹き出しをシートにレイアウトすると、吹き出しの記号にシート番号とビューの詳細番号が反映されることがわかります。

シートにレイアウト

モデルを詳細に作り込みすぎると設計変更への対応が遅れがちになります。おさまり検討が可能なできるだけ簡単なモデルを作成して様々な部位を検討し、必要なディテールを入念に作成するのも一手ではないでしょうか。