2024年9月7日土曜日

ハンチ梁の裏側

ハンチ梁の裏の線

次の図のようなハンチ梁(構造フレーム)の裏側の線(矢印)を

梁の裏の線を隠線表示するには?

平面ビューに表示したい場合があります。

梁の裏側の線も隠線として表示できる!

このように構造フレーム自身の裏側の線を表示するにはファミリプロパティ「隠線として表示」の設定がカギとなります。

隠線として表示

構造フレームのファミリテンプレート(構造フレーム - 梁とブレース(メートル単位).rft)を開きます。プロパティウィンドウにはファミリプロパティが表示されています。

モデルのマテリアルの動作の値をコンクリートまたはプレキャストコンクリートにすると隠線として表示プロパティが現れます。

「モデルのマテリアルの動作」がコンクリート、プレキャストコンクリートだと「隠線として表示」プロパティが現れる

この隠線として表示プロパティは3つの値が選択できます。

  • 他の要素により隠されたエッジ
  • 梁自体により隠されたエッジ
  • すべて

それぞれの振る舞いは次のようになります。

他の要素により隠されたエッジ

他の要素(この場合は床)によって隠されたエッジだけが隠線として表示されている。

梁自体により隠されたエッジ

梁自体により隠されたエッジとは梁の裏側の線のこと

すべて

すべてのエッジが表示されている

詳細はこちらのヘルプに記載されているので参考にしてください。

2024年8月25日日曜日

隠線表示と専門分野

隠線を表示する

壁の向こう側にある階段を表示するには隠線を表示すると便利です。

隠線で壁に隠れたササラを表示する
隠線表示を使用するには、ビューのプロパティ

  • 専門分野
  • 隠線を表示

の設定が重要です。

ビューのプロパティ「専門分野」「隠線を表示」

隠線を表示の意味

表示タブのグラフィックスパネルには隠線表示と隠線非表示のボタンがあります。

隠線表示/非表示
このボタンが機能するのは、ビューの隠線を表示の値が「専門分野別」の時だけで、「なし」または「すべて」のときは機能しません。

  • なし:隠線は全く表示されません。
  • すべて:すべての隠線が表示されます。

専門分野との関係~構造

専門分野が構造の場合、構造部材(構造フレーム、構造柱、構造壁、床、屋根)は、必ず隠線表示されます。これを隠線非表示コマンドで非表示にすることはできません。

床の下に構造柱、構造フレーム、構造壁、床を配置して

構造柱、構造フレーム、構造基礎、構造壁、床を床の下に配置

平面ビュー(見下げ)で、専門分野:構造、隠線を表示:専門分野別 とし、ビューの奥行を調整すると、次の図のように床下にある構造部材が隠線で表示されます。

床下の構造部材が隠線で表示される

自動的に隠線表示されるのは構造部材(床・構造壁・構造フレーム・構造柱・構造基礎カテゴリのファミリ)のみです。例えば階段のような建築ファミリは、床に隠れて表示されません。

構造ファミリでなければ自動的には隠線表示されない
非構造部材を強制的に隠線表示したい場合は、表示タブ>グラフィックスパネル>隠線表示ツールを使います。ボタンを押して、床→階段の順に選択すると隠線で表示されます。
隠線表示
手動で隠線表示した部材を非表示にするには、表示タブ>グラフィックスパネル>隠線非表示ツールを使って非表示に戻します。

自動で隠線表示された要素を非表示にする

隠線表示ツールは手動で隠線表示にするツールなので、自動で隠線表示された要素には効き目はありません。自動で隠線表示された要素を非表示にするには

  • カテゴリの<隠線>サブカテゴリを非表示にする
  • ラインワーク(線種変更)で線種<非表示>で線を上書きする
  • 要素を個別に非表示にする
のいずれかの方法で非表示にします。

専門分野との関係~設備

専門分野が機械・給排水衛生設備・電気の場合、ダクトと配管が交差したときの隠線が表示されます。この表示はMEP設定の隠線処理>MEP隠線を作成線種の値で調整できます。

例としてダクトが交差している状態を見てみます。

ダクトが異なる高さで交差している
これを平面ビュー(専門分野:機械+隠線を表示:専門分野別)で見ると、下側のダクトが隠線で表示されます。
重なったダクトが隠線で表示される
ところがダクトや配管のサブカテゴリには<隠線>がありません。どこで線種や表示非表示を設定するのでしょう?

ダクトと配管の隠線の表示および隠線の線種はMEP設定>機械設定>隠線処理で行います。

MEP設定>機械設定
表示非表示は「MEP隠線を作成」で、隠線の線種は「線種」で設定します。ダクトと配管の隠線の設定はビューごとではなく、プロジェクト単位で決まります。

専門分野との関係~建築とコーディネーション

専門分野:建築またはコーディネーション+隠線を表示:専門分野別、の場合の隠線表示はまったくの手動による指定で、初期的には隠線は全く表示されていません。

表示タブ>グラフィックスパネル>隠線表示ツールを使って、構造のセクションで説明した階段のように、隠線で表示したい要素を一つずつ指定します。

例:次の図のようにRC階段が壁を挟んで設置されている場合、

壁を挟んだRC階段

断面ビュー(専門分野=建築、隠線を表示=専門分野別)を作成すると、壁の向こう側の段は表示されません。

断面ビュー
表示タブ>グラフィックスパネル>隠線表示 をクリックし、壁→階段 の順番にクリックします。
隠線を表示した状態

この操作により、壁に隠された階段を表示することができます。なお隠線の線種は各カテゴリの<隠線処理>サブカテゴリで設定します

各カテゴリには<隠線処理>サブカテゴリがある


2024年8月18日日曜日

複層壁の領域を分割

壁のレイヤを水平に分割する

レイヤは水平に分割した例
壁のレイヤは上図のように水平に分割して異なるマテリアルを割り当てることができます。分割数はいくつでも構わないのですが、レイヤの厚さは一定です。

手順

ここでは「建築テンプレート」をもとに、具体的な手順について説明します。
  1. 標準壁:標準200mmで壁を作成
  2. 作成した壁を選択して[タイプ編集]をクリック
  3. [複製]ボタンをを押して、名前を適当につけてOK
  4. 構造の[編集]ボタンをクリックし、アセンブリを編集ダイアログボックスを開く。
  5. [<<プレビュー]ボタンをクリック
  6. ビュードロップダウンリストから断面図:タイプ属性を修正を選択
  7. サンプルの高さを5000程度とする。
  8. [挿入]ボタンをクリックし、レイヤ1に次のレイヤを追加
    1. 機能:仕上2
    2. マテリアル:レンガ、一般
    3. 厚さ:25mm

  9. [領域を分割]ボタンをクリックし、左側の断面ビューで第一レイヤを下端から1500程度でクリックして分割。

  10. [挿入]をクリックし、レイヤ1に次のレイヤを追加
    1. 機能:仕上2
    2. マテリアル:木目 - ナチュラル
  11. 新たに追加したレイヤ1の行を選択し、[レイヤを割り当て]をクリックし、断面ビューで分割したレイヤの上側の領域をクリック

  12. レイヤリストの厚さの項目がグレーになります。以降、レイヤの厚さは次の手順で編集します。
    1. [修正]ボタンをクリック
    2. 断面ビューで外側の境界をクリック
    3. 表示された寸法を編集

  13. OKを2回押す
    レイヤを分割した壁タイプ

壁のスイープを追加

さらに見切り材として壁のスイープを追加してみます。
  1. プロファイル - ホスト(メートル単位).rftで次のようなプロファイルを作成する。

  2. プロファイルの用途を壁スイープとして、プロジェクトにロードする。
  3. 壁のタイプ編集で、構造の[編集]ボタンを押し、アセンブリを編集ダイアログボックスを開く。
  4. [壁スイープ]ボタンを押して、[追加]をクリックし、次のように設定。

    1. 基準オフセット:1500
    2. 基準:下部
    3. 向き:面に垂直
    4. 側面:外部
    5. 側面オフセット:-20
    6. フリップ:□
    7. セットバック:0
    8. 壁の欠込:✔
    9. 切り取り可能:✔
これで境界に見切り(壁のスイープ)が配置されます。壁の欠込をチェックしたので、内側にオフセットしたスイープで壁のレイヤが切り取られてることに注目してください。
壁のスイープで見切りを追加
スイープとの組み合わせで腰壁+幅木なども表現できます。
弱点としては、やはりレイヤの厚さを分割領域ごとに変更することができないことですが、一方でマテリアルの面積などは正確に把握することができます。

2024年8月3日土曜日

RC梁のハンチ

ハンチファミリを作るべきだが。。。

RC構造フレームでハンチ梁が必要になった時、本来ならばハンチ形状をもつ構造フレームファミリを作るべきです。しかしながら今回は応急処置的に梁に開口をあけて対応する方法をご紹介します。

構造フレームに開口

まず普通の矩形のRC梁(Autodeskファミリだとコンクリート-長方形梁など)を配置し、断面図や立面図などで表示します。このとき、梁成はハンチ部分を含めた最大の高さにしておきます。

梁を作成し立・断面ビューを開く

  1. 構造タブ>開口部パネル>面をクリック
    開口部パネルの面

  2. 構造フレームをマウスオーバーすると、スケッチ面を表す緑の枠が現れるのでクリックして選択
  3. 修正|開口部の境界を作成タブ>描画パネルで矩形を選択して、形状をスケッチ
    削り取る部分をスケッチ

  4. モードパネル>✔を選択し、形状を確認する
    ハンチ梁の形状

斜めハンチも部分ハンチも思いのままに作成できます。

斜めにもできます

左右も開口部を作成できる

開口部は平面図でスケッチすれば鉛直に梁を削り取ることができます。平面ビューを開き、同様に開口部-面をクリックし、構造フレームをマウスオーバーします。緑色の枠が梁を囲みます。
緑の枠は作業面を表す

この緑色の枠は、スケッチを作成する作業面を表しています。構造フレームを選択して削り取る部分をスケッチします。
開口部をスケッチ
一度に二つのループは許可されていないので、同じ操作を繰り返すと、次のようなハンチも作成可能です。


配筋はできるのか?

ハンチ梁で気になるのが配筋のおさまりです。開口部-面でハンチを作成した場合も、問題なく拘束やかぶり厚を設定して鉄筋を配置することができるので、配筋の検討も十分に可能です。

鉄筋は問題なく配置できる

この方法だと、すべてのハンチ梁をいちいちスケッチしなくてはならないので、あまりお勧めできる方法ではない反面いろいろな形状が作れるので、ワンポイントリリーフ的に使うのであれば便利な機能です。

2024年7月28日日曜日

ARTマテリアル~ガラス

透過とガラスの違い

ARTベースマテリアルには透明の表現として

  • 透明
  • ガラス

の二つがあります。ガラスは透明マテリアルを厚みが薄い建築用のガラスに向けて簡素化したベースマテリアルです。今回はこのガラスマテリアルの使い方についてです。

Autodesk Rendering ヘルプではガラスマテリアルの概念を次の図で示しています。

ガラスマテリアルの概念
一方、透過マテリアルは次の図のようになっています。
透過マテリアル
透過マテリアルに比べガラスマテリアルはオブジェクトの厚さ」と「屈折」を考慮しないことによりパフォーマンス向上を図っていてます。建築の板ガラスなどには最適なマテリアルなのです。

ガラスマテリアルのパラメータ

ガラスマテリアルのパラメータは次の図の通りです。

ガラスマテリアルのパラメータ

重要なのは「可視透過率」の値ですが、この値は透過色と反射カラーの値で自動的に決定されます。可視透過率が高ければ建物内の様子がよく見え、低ければ鏡のように反射します。

透過色をRGB255-255-255とし、反射カラーの値を240-240-240、140-140-140に設定すると、可視透過率はそれぞれ0.129、0.738となります。この状態でレンダリングをかけた結果が次の図です。

左:可視透過率0.129、右:可視透過率0.738

透過率が下がると、鏡のような効果が得られることがわかります。左側のキューブは前景のレンガを反射しながらも、背景のグリッドもわずかながら透過しています。

また右側のキューブでは、背景の白いグリッドはほぼそのまま透過し、前景のレンガはほとんど反射されていません。

ガラスマテリアルの設定方法としては

  1. ガラスの色を透過色に設定
  2. 反射カラーをグレースケールで操作して目標の可視透過率に近づける

の手順でマテリアルを決めるとよいでしょう。

空を反射する

外観のレンダリングをするときに、空の様子をガラスに反射できるかはカメラの角度とガラスのマテリアルによります。

次のモデルはAutodeskサンプルのrac_basic_sample_project.rvtの2階の部分ですが、二つの窓の前には白いバスタブを配置しています。

窓際にバスタブを配置
外観のカメラを見上げるように配置します。
見上げのカメラを配置

二つの窓ガラスに次のように透過率と反射カラーを設定します。
左:透過色 233-233-233、反射カラー 223-223-223、可視透過率0.740
右:透過色 233-233-233、反射カラー 238-238-238、可視透過率0.145
この状態でレンダリングを行うとこのようになります。

左:可視透過率0.74、 右:0.145
右側は内側のバスタブやドアが全くと言っていいほどわかりません。左はよく見るとガラスに雲が反射していることがわかります。
透過率を調整すれば、内側と外側のガラスへの映り込みをコントロールすることができます。
どちらの窓も可視透過率0.442の場合

すりガラス

すりガラスを表現するには、可視透過率を上げておいて、透過と反射の粗さの値を設定します。パラメータには粗さが二つあります。

▼パラメータの粗さは、すべてのマテリアル共通の「粗さ」を示しています。表面の凹凸から得られる結果、つまり反射光の粗さ、分散の度合いを示しています。
▼ガラスの透過の粗さは、透過光のみに作用する粗さです。
ガラスは裏表あるので、二つの粗さに同じ値を設定するとよいでしょう。

次のレンダリング結果は、透過率0.88で、左が粗さ0.35、右が粗さ0.15に設定した結果です。

左:粗さ0.35 右:粗さ0.15

背景(グリッドライン)のぼんやり度が異なりますね。粗さ0.35でかなり背景がぼんやりしてきます。

  • 透過色
  • 反射カラー
  • 粗さ

をコントロールして思い通りのガラス表現をしてみましょう。

2024年7月21日日曜日

ARTマテリアル~積層

積層マテリアルの特徴

ARTマテリアルのベースの一つ「積層」は、表面にコーティングをかけた材質を表現するのにぴったりです。

左・不透明、右・積層


上の図はどちらも黄色(232-173-35)を色に指定していますが、左は不透明マテリアルを、右は積層マテリアルをベースとしています。右の積層マテリアルのほうがメタリック感が出ていますね。

Autodesk Renderingヘルプには、積層の概念が次のように示されています。

上部コート層があるのが特徴

積層マテリアルのパラメータは次のとおり対応しています。

上下2層のそれぞれの設定が可能

基準ハイライトの「粗さ」は反射の粗さを示します。

基準ハイライトの「重み」は、基準色と基準ハイライト色の比率を0~1の範囲で調整し、0ならはハイライト色は無視されます。

表面コーティングは反射率と粗さの数値のみの設定で、上図の場合は粗さを0に設定しているので、乱反射はなくまっすぐに入射光を反射することを示しています。

本磨きの花こう岩

積層マテリアルで本磨きの花こう岩のマテリアルを作成しながら、各パラメータの働きを見てみましょう。

まずは石の画像を準備しましょう。

オートデスクマテリアルライブラリより

上の図は"C:\Program Files\Common Files\Autodesk Shared\Materials\Textures\3\Mats\granite_red_color.jpg"にある赤っぽい花こう岩の画像です。

  1. 新規のマテリアルを作成し、アイデンティティタブで名前を「花崗岩1」とする。
  2. 外観タブで[このアセットを置き換えます]ボタンをクリック
  3. アセットライブラリで、外観ライブラリを選択し、検索窓に「ベース」と入力して検索。
  4. ベースマテリアル - 積層 をダブルクリックまたは右端の矢印ボタンを押して、アセットブラウザを閉じる
  5. [このアセットを複製する]ボタンをクリック、▶情報を展開して名前を花こう岩1などとする。
  6. 基準色の拡散光の色の右端の▼ボタンを押してイメージを選択して準備した画像を」選択。
    基本色にイメージを設定しただけ

まずは、画像のみ設定してレンダリングしてみます。比較のために不透明ベースを使用し他マテリアルを隣に配置しています。
左・不透明、右・積層

これでも十分に光沢感に差が付きます。基準ハイライトの設定が、色が白で重みが0.47もあるため、たくさん反射しています。重みを調整すれば、つやつや感も修正できます。
重みを0.2に変更

詳細な設定

ここまでの設定でも十分に「らしさ」は表現できているとは思いますが、より詳細に設定するならば
  • 基準ハイライト:重み
  • 基準ハイライト:レリーフパターン
  • 表面コーティング:反射率
にそれぞれ画像を用意します。幸いにオートデスクマテリアルライブラリには次のような画像があります。
基準ハイライト:重み
"C:\Program Files\Common Files\Autodesk Shared\Materials\Textures\3\Mats\granite_red_refl.jpg"

レリーフパターン:法線マップ画像
"C:\Program Files\Common Files\Autodesk Shared\Materials\Textures\3\Mats\granite_base_specks_norm.jpg"
表面コーティング:反射率

"C:\Program Files\Common Files\Autodesk Shared\Materials\Textures\3\Mats\granite_red_refl.jpg"

これらの設定を次のように行います。

各パラメータに画像を設定
レンダリング結果は次のようになります。
より質感が向上しています。

基準ハイライト:重みに画像を設定した効果は、次のレンダリング結果を見ればよくわかります。

光の「粒」に注目!

これは床に作成した花こう岩のマテリアルを設定してレンダリングした結果ですが、小さな光の粒が反射しているのが確認できます。重みに設定した画像はほとんど黒で白い点がいくつかあるものですが、この白い点だけが強く反射しているというわけです。

ここまでの詳細な設定は、CGプロフェッショナルでない限りは必要ないでしょう。しかしながらわずかの設定で、メタリックな塗装やつやつやの石の表現が可能になることはARTマテリアルの優れた点です。