2026年10月4日日曜日

『シンプル・確実な』Revitモデルの作り方(3)

 【第3回】BIM=パースという幻想を捨てよう。「1:1モデリング」からの脱却

「パース(パースペクティブ)をきれいに見せたいから、細部まで作り込む」

「せっかくBIMなのだから、実物とまったく同じ1:1のリアルなモデルを作らなければいけない」

もし意匠設計でこのように考えているとしたら、今すぐその思考を「断捨離」する必要があります。整った美しい図面を切り出すために最も重要なのは、リアルな3Dモデルではありません。「整理整頓されたシンプルなモデル」です。

サンプルデータのダウンロード(v2026)

1.なぜ「BIM=パース」という考え方が危険なのか?

パースとBIMは、根本的に目的が異なります。

  • パースの目的: 「見た目のリアルさ」を追求すること
  • BIMの目的: 建物の「データ(情報)構造」を構築し、図面や集計表に活用すること

パースの世界では、ドアノブの形状からサッシの細かい見切りまで1:1で忠実にモデリングすることが求められます。しかし、製造モデルでもない計画段階のBIMでそれをやると、データは肥大化し、PCは重くなり、少しの変更でモデルが崩壊します。つまり、「パースのための過剰モデリング」が、BIM本来の良さをすべて殺してしまうのです。

例えば、BIMではドアノブの3D形状を一生懸命作り込む意味はありません。形状はシンプルな記号的表現にとどめ、プロパティに「レバーハンドル(SUSヘアライン仕上げ)」と文字情報(データ)で持たせれば十分です。
BIMにはハンドル「形状」よりも「情報」

2. ホスト要素の「包絡」こそが図面のクオリティを決める

細部の3Dパーツを作り込む代わりに注力すべきなのは、床・壁・天井といったホスト要素の「包絡」です。

きれいに包絡されたモデルは、切り出した図面(断面・詳細)にしても誰もが納得する美しい形状になります。そして、正しい包絡を実現するためのカギは以下の2点に尽きます。

  • 「結合」操作の徹底

  • 「マテリアル(簡略ハッチパターン)」の正しい設定

過剰なパーツ作成をやめ、基本構造体の接合部やマテリアル設定に意識を向けることこそが、整った図面を生み出す最短ルートです。(参考「包絡に関する考察」)

「簡略ハッチカラー」と「簡略ハッチパターン」

3. 断面図を「大量に発行」してモデルをチェックする

手描き時代や2D CADの時代は、断面図といえば「東西・南北の2面」程度が当たり前でした。なんとかその1~2枚に納めようと無理やり切断線をクランク(屈曲)させ、結果として図面もモデルも複雑化していたのが昔のやり方です。

しかし、どこでも瞬時に断面を切れることこそがRevit最大の利点です。これを活かさない手はありません。

  • 「チェック用」で終わらせず「発行図面」にする

    単なる作業用の一時的な断面で終わらせず、図面シートとして正式に発行します。図面として世に出す意識を持つことで、モデルの不整合や包絡の不備に対する意識が劇的に変わります。

    断面で隅々までチェックしよう

  • 主要な通り芯や気になる取り合いはすべて切る

    各階すべての平面図を描くのと同様に、断面図も惜しみなく大量に作成・レイアウトします。

    どんどん断面を切ろう!

  • 断面線は曲げてはならない!

    断面線を屈曲させる機能(セグメントを分割)は使ってはいけません。素直にまっすぐ切りましょう。1枚の断面ですべてを語ろうとする必要はないのです。語りたいだけ、たくさん断面を切りましょう。Revitの最大の魅力はどこでも断面が自由に切れることです。

    切断線を曲げてはいけません

モデルの隅々まで断面を切ってチェックし、包絡を整えていく作業こそが、結果として最も確実で美しいBIMモデルを作り上げます。

4. 3Dピクトグラム思考:軽量化と美しい2D表現の両立

本連載のサンプルモデルに含まれるファミリでは、この「選択と集中」を徹底しています。

  • 3D表現は「3Dピクトグラム」に徹する

    衛生設備や家具などの曲面要素はポリゴン数を削ぎ落とし、「一目でそれとわかる象徴的な形」に抽象化して軽量化します。

    ピクトグラム化した大便器

  • 2D表現(図面)は3Dと切り離す

    平面図や立面図では3Dを非表示にし、綺麗に整えた2D線画を表示させます。

    図面上は2D線画

窓・ドア

窓とドアについてもこの「3Dピクトグラム思考」に「共有ファミリのネスト」の考え方を加えた作り方になっています。
  • 枠形状:簡略、標準、詳細共に次の図のようにシンプルに作成しています。開口は複雑なボイドを使わず素直に"開口部"を使用しています。
    シンプルな枠形状

  • 共有ネスト:障子のファミリを共有ファミリとして、各パネル部にネストしています。
    共有ネストの障子

過剰な躯体開口、サッシ形状を断捨離することで、変更に強い、シンプルな建具を実現することが目的です。この窓については、「窓キット」としてファミリ群を無償公開する予定です。なお、ドアも同じように作っています。こちらもただいま公開に向けて整備中です。

「見せかけのリアル」を手放そう

「BIMなのだから細部までリアルに作らなければいけない」という思い込みを手放してみてください。BIMでパースを作ることをあきらめてください。長年のRevitユーザーならば、歴代のRevitがパースに対してあまり興味を示してこなかったことをよくご存じでしょう。

パースのための過剰なモデリングをやめ、「包絡を整え、断面をしっかり切り、データは厳格に管理する」という基本に立ち返ること。それだけで、BIMは驚くほど軽く、美しく、実用的なツールに変わります。

2026年9月27日日曜日

『シンプル・確実な』Revitモデルの作り方(2)

【第2回】Revit標準テンプレートで十分

「Revitで綺麗な図面を描くには、テンプレートをガッツリ作り込まないとダメだ」と思っていませんか?実は、Revitに標準添付されている「建築テンプレート」のままでも、素直に機能を使いこなせば十分に美しく、見やすい図面が作成できます。データをダウンロードしてチェックしてみてください。

データのダウンロードはこちらから(ver2026・前回から少し修正しています)

標準機能を素直に使うコツ

  • 基本の見た目調整
    • 文字スタイル、オブジェクトスタイル、線種をちょっと整えるだけで、図面の品格は劇的に上がります。
  • 「ビューフィルタ依存」からの脱却
    • 図面作成で最も迷宮化しやすいのが、ビューフィルタの乱用です。「この要素、なぜこのビューで消えているの?」という原因不明のストレスは、ほとんどの場合過剰なフィルタ設定が原因です。

特殊なルールで要素を隠すのをやめ、Revitの標準的な表示制御(表示/グラフィックスやフェーズなど)に素直に従うことで、「誰もが仕組みを理解できる安心なモデル」へと生まれ変わります。

基本の見た目調整

文字タイプは文字サイズとフォント選びが重要です。まずA1出力前提として文字のサイズは2.5mmと2.0mmに、フォントは歴史と伝統のMS UI GOTHICを使用しています。少々古臭いのですが、Forgeも標準で対応しているMS UI GOTHICは超無難な選択です。

建築テンプレートの線種パターンは見分けがつきやすいのでそのまま採用していますが、少し引き締めた線種(1TS01~3HA04)を導入しています。

オブジェクトスタイルはで修正したのは、床・壁・天井・屋根の切断の太さです。線の太さは1,2,3を使うこととして、基本的には投影は1、ホスト要素の断面は3としています。

ビューフィルタ依存からの脱却

ビューの表現に「上書きの優先度」で述べたように、いろいろな段階があります。特にビューフィルタはRevitらしい機能なのですが、かえってわかりにくさを助長している面も否めません。

ビューフィルタは「サンプル意匠」から大幅に削減しています。原則として線の表現はオブジェクトスタイルで、カテゴリの表示非表示は表示グラフィックスで制御することとし、だれでも理解しやすいビューを作ることを心がけています。

平面図のビューフィルタは1つだけ

各図面について

各図(ビュー)の見どころについて説明します。

内部仕上表
集計キーを使った内部仕上表

集計キーの機能を使っています。作り方は「ゆるめの仕上表チュートリアル」の通りですが、使用しているパラメータは組み込みパラメータの
  • 部署
  • 仕上 床
  • 仕上 幅木
  • 仕上 壁
  • 仕上 天井
を使っています。下地と仕上は一つのパラメータにまとめています。値の入力方法については「複数行の入力」を参考にしてください。

外部仕上表
外部仕上表

組み込みパラメータの
  • マーク(タイプ)
  • コメント(タイプ)
  • 説明
を使用しています。作り方は「外部仕上表と立面図」をご覧ください。この情報は平面図などほかの図にもタグで表記していますので探してみてください。

平面図・立面図・断面図
平面図
立面図

断面図

  • 床壁天井のタイプ
    • タイプはまだ計画段階なので、原則として外壁200mm、内壁100mmのできるだけ簡素なタイプ分けにしています。
    • 二重壁などの詳細化は次の段階とし、まずは変更のしやすさ、作業性の良さを重視しています。
  • 壁・床の表現
    • 詳細レベルは「簡略」で尺度は「1:100」です。「サンプル意匠」のような床壁天井の黒塗り潰しはせず、それぞれのタイプの「簡略ハッチカラー」「簡略ハッチパターン」を使って、RC、押出成形版、区画壁の見分けがつくようにしています。
  • 図中の注釈
    • マルチカテゴリタグで、タイプパラメータ「説明」や「コメント(タイプ)」を表示しています。これにより各ビューで一貫した情報表示が可能になります。
  • 天井表現
    • 天井段差や庇のラインはラインワークで表示しています。手法については「天井のラインを平面図に表示するには?」を参考にしてください。
    • ブラインドボックスや天井点検口は造作工事のカテゴリです。造作工事はビュー範囲に含まれていれば切断線より上にあっても表示されるので、ビューのグラフィックを上書き>要素別で線種パターンをオーバーヘッド、透過度100%としています。
      ブラインドボックスの表示は要素で上書きしている

  • たくさんの断面
    • 断面は各スパンに1つ以上の断面ビューを作成しています。きれいな図面を作るにはきれいなモデルが必要です。断面ビューをたくさん図面として作ることで、モデルの隅々まで気を配ることができます。

天井伏図
天井伏図

  • 天井仕上
    • 天井仕上は組み込みパラメータ「仕上 天井」をタグで表示しています。こうすることでモデルとプロパティの内容の整合性をチェックしやすくなります。
    • 軒の仕上は外部仕上表にも使用したコメントと説明を使用しています。
  • 天井高
    • 指定点高さで実際の天井のレベルを表示しています。

建具表
建具表

  • ドア・窓については枠のファミリにパネルの共有ファミリをネストする方法で作成しています。ファミリの詳しい作り方や使い方についてはデータとともに次の機会に説明しますのでしばらくお待ちください。
  • 法の記号はBIM図面審査における確認申請図書表現標準初版のP2~の「文字記号」を使用しています。今後タグとして図中に表示できるように共有パラメータとしています。
  • カーテンウォールの建具表は「カーテンウォールの建具表」の方法を使っています。

面積関連
延床面積の集計表

  • BIM図面審査における確認申請図書表現標準初版のP13に従い、根拠式は採用せず各辺の長さを寸法で記入しています。
  • 延床面積の集計表では「集計表~用途別面積表」で紹介した方法を使っています。

2026年9月20日日曜日

『シンプル・確実な』Revitモデルの作り方(1)

【第1回】脱・迷宮化!モデルの「断捨離」

計画段階のBIMモデルを作成していて、こんなストレスを感じたことはありませんか?

  • 重くて動かない
    • 初期段階なのに細かく作り込みすぎてデータが肥大化している
  • 修正が手間すぎる
    • 独自の共有パラメータや設定が複雑で、どこを触ればいいか迷う
  • データが合わない
    •  図面の文字とプロパティの値がズレてしまう

近年のBIMは、最初からモデルもプロパティも細かく作り込みすぎる「過剰表現」に陥りがちだと感じています。これがデータの迷宮化を招く一因となっています。

しかし、Revitは製造用の詳細モデルを作るためだけのツールではなく、計画段階で本当に必要なのも、細部まで作り込まれたリアルな3D形状ではないはずです。

そこで今一度初心に立ち返り、モデルとパラメータの「断捨離」を実行してみることにしました。つまり次の3つを切り離したモデルを作ってみよう、と思い立ちました。
  • 過剰な3D形状(幾何ディテール)
  • 乱立する共有パラメータ
  • 「図面に文字を直書きする」習慣

手書き時代はどうだったか

昔の手書き図面を思い出してみました。


線数は少なくシンプルですが、必要な情報が美しく整い、変更にも柔軟に対応できていました。

「データは厳格に、形状はシンプルに」

これこそが、AIやクラウド(Forma等)と連携するこれからの時代に求められるBIMのひとつの姿ではないでしょうか。図面はモデルデータを可視化した「結果(ビュー)」に過ぎません。過剰な幾何形状を追うのを一度やめて、正しくプロパティを管理することに注力してみる。

そんな試みとして、Revit標準添付の「サンプル意匠.rvt」を、この思想のもとでゼロからモデリングし直してみました。

サンプルモデルの無料配布(Revit 2026版)

サンプル意匠.rvtを再構築

このモデルは特別なアドオンアプリを一切使わず、Revitの「標準機能のみ」で作成しています。使用したテンプレートも、標準添付の「建築テンプレート」そのものです。もちろんファミリもシンプルであることを第一として私が新たに作成したので自由にコピーしていただいてかまいません。

形状はシンプルに保つ

私自身、試行錯誤を重ねる中で「Revitが本来持っているソフトウェアの設計思想に素直に従い、我流のルールや過剰な作り込みを排除するだけで、BIMはこんなにも軽快で快適になるのか」と驚きました。

まだまだ模索中ではありますが、ビュー、集計表、シートなど、Revit本来の趣旨に沿って丁寧に作成したつもりです。まずはデータをお手元にダウンロードいただき、モデルを自由に触ってみていただければ幸いです。今後改定を進めていく予定です。

[ 📥 サンプルモデル(Revit 2026)をダウンロードする ]

リンクをクリックし、右上の[ダウンロード]ボタンでデータをダウンロードできます。



この「脱・迷宮化」を実現するための具体的なノウハウを全4回でお届けします。次回からは、このサンプルデータ内の具体的な工夫や見どころ(図面表現・ファミリ・パラメータの扱い方)を順番に解説していきます。

2026年9月13日日曜日

土量計算について

地形ソリッドで土量計算

地形ソリッドで土量計算をする手順を紹介します。地盤の時と基本の考え方は同じで

  • 同じ外形線
  • 隣り合うフェーズ

の二つの原則をまもれば、地盤同様に土量を計算できます。

既存地盤の作成

では建築テンプレートを使ってその手順を確認してみましょう。

  1. 建築テンプレートで新規プロジェクトを開始
  2. ビュー>平面図>設計GLを開き、20m四方の地形ソリッドを作成する
  3. 地形ソリッドのプロパティで次のように設定する
    • 名前:既存地盤
    • 構築フェーズ:既設
    • 解体フェーズ:新設

本来はサブ領域を編集して既存の地形を作成しますが、土量計算の仕組みを確認するだけなので何もしなくても構いません。

構築フェーズ=既設、解体フェーズ=新しい建設

計画地盤の作成

  1. 作成した既存地盤を選択してCTRL+Cでクリップボードにコピー
  2. 修正タブ>クリップボードパネル>貼り付け▼>同じ位置に位置合わせ
  3. プロパティを次のように設定する
    1. 名前:計画地盤
    2. 構築フェーズ:新しい建設
    3. 解体フェース:なし
  4. サブ要素を修正を押して、すぐに修正を押します。
この時点ですでに切土盛土の計算ができています。
切土盛土の値が表示される

あとはこの計画地盤をサブ要素を編集したり、サブ区画や掘削、切り取りなどのコマンドを使って加工していくと、盛土切土の数値が変化していきます。
計画地盤を加工することで土量が算出される
Revit2027ではその地盤を何が何㎥切り取っているかを示す、個々の要素の掘削量も示せるようになっています。


2026年8月30日日曜日

埋もれる白線

白線が地形ソリッドにめり込む原因

地形ソリッドに勾配を付けて駐車スペースのファミリを配置すると下の図のように床にめり込んだ状態になる場合があります。

地形ソリッドにめり込んだ駐車スペース

2つのポイントを押さえればめり込まずに配置することができます。

  • ファミリ:「常に垂直」をOFF
  • 地形ソリッド:十分な平坦面を確保する

常に垂直をオフ

ファミリプロパティ「常に垂直」をオンにすると、ファミリがホストされる面の勾配に関係なく、常に垂直に配置されるようになります。

オフにすると、ホストされる面の勾配なりに配置されます。

ファミリプロパティ「常に垂直」

駐車場の白線ファミリは「常に垂直」をオフにするとよいでしょう。するとファミリを配置するときにクリックした面に配置されます。

十分な平坦面を確保

それでもまだ、埋もれていたたり、浮いていたりすることもあります。

常に垂直をオフにするだけでは不十分

床や地形ソリッドなどに勾配を付けた場合、上面がいくつかの平面に分割されます。ファミリはクリックした面に配置されるため、その面には白線ファミリをホストするに十分な広さが必要です。

駐車スペースを配置する部分に十分な「平坦面」を確保します。勾配を付けるにしても地形ソリッドのサブ要素を編集し、駐車場ファミリを配置する部分に平坦な勾配面を作成しましょう。

平坦な勾配面を構成したうえでファミリを配置する

2026年8月23日日曜日

変圧器(MEP)

変圧器の役割

Revitの電気設備カテゴリにはいくつかのパーツタイプがあります。そしてその役割をまとめると次の表のようになります。

パーツタイプ主な役割
分電盤分岐回路へ電力を供給
配電盤より上位の配電設備
変圧器一次側→二次側へ電圧変換
設備スイッチ負荷機器への給電を開閉・遮断
他のパネル上記に当てはまらないパネル系設備

このうち変圧器の役割には注意が必要です。基本的には「電圧を変換するが、回路構成そのものを自由に変換する装置ではない」ととらえると理解しやすいです。

一次側と二次側

Revitの変圧器をプロジェクトに配置すると、インスタンスパラメータに「配電システム」と「2次配電システム」を選択できます。キュービクル内での高圧受電盤から低圧電灯盤への変圧器を考えると

1次側:三相3線 6600 V → 2次側:単相3線 200/100 V

という構成にしたいところですが、Revitの変圧器ではこのような極数(電圧線の数)の異なる配電システムの変換はできません。

三相3線6600 V から相3線200/100 Vへの変換はできない

現実には

高圧受電盤(三相3線6600V)→変圧器→低圧配電盤(単相3線200/100V)

ののような変圧器構成を考えることができますが、Revitが内部で「一次側の3本の線を、この巻線によって二次側のL1-N-L2に変換した」と電気工学的にシミュレーションしているわけではありません。

Revitの変圧器を理解するうえでは、「現実の変圧器を再現している」と考えるより、

「極数(Poles)は維持したまま、電圧だけを一次側→二次側へ変換する機器」

くらいに考えるのがよさそうです。

ですから、3相3線6600V(極数3)から変換できる配電システムは

  • 三相4線 240/415V(極数3)
  • 三相3線 400V(極数3)
  • 三相3線 200V(極数3)

などです。

三相3線6600Vから三相4線240/415Vの例

ではどうするのか?

ではキュービクル内で行っているような、

高圧受電盤(三相3線6600V)→変圧器→低圧配電盤(単相3線200/100V)

のような場合はどうすればいいでしょうか。Revitで回路が接続できるかどうかは

  • 電圧は整合しているか?
  • 極数は整合しているか?

という判断になりますので、変圧器では

一次側:三相3線6600V→二次側:三相3線200Vに設定し、

三相3線から三相3線へ。電圧のみ変換。

変圧器から供給される電圧線(極)2本を使って、単相3線200/100Vを接続することになります。

三相三線200Vに単相三線200/100Vを接続できる

低圧電灯盤(パーツタイプ配電盤)の電圧を200V、極数を2に設定すれば変圧器の二次側から出力される三相三線200Vに対して、極数、電圧ともに整合しているので接続可能というわけです。

実際の電気工学的なふるまいはさておき、Revitでキュービクルを再現するとすれば次のような構成になるでしょう。

キュービクルの中

システムブラウザ

2026年8月15日土曜日

Vulkanへの対応

Revit2027.2 新機能

Revit2027.2で グラフィック描画機能にちょっと注目すべき改善が入りました。Vulkanの採用です。


Autodesk Revit 2027 ヘルプ | アクセラレーテッド ビュー用の Vulkan ベースのグラフィックス エンジン オプション | Autodesk

いままで描画はOpenGLが使用されてきましたが、ここにきてAutodeskもOpenGLの限界とRevitモデルの巨大化を見据えて、Vulkanへの対応を始めたというところではないでしょうか?

Vulkanって何?

簡単に言うと、Vulkan(バルカン) は OpenGL の後継とも言える、高性能な3DグラフィックスAPIです。

これまで Revit の一部のグラフィックス処理では OpenGL が利用されていました。OpenGLは1992年に登場した非常に歴史の長い規格で、CADやシミュレーションなどで30年以上使われてきました。しかし

  • CPUへの負荷が大きい
  • マルチコアCPUを十分活用できない
  • GPU性能を引き出しにくい

という課題があります。

Vulkanは2016年に公開された次世代のグラフィックスAPIです。OpenGLを策定していた Khronos Group が開発したもので、OpenGLの欠点を改善しています。

特徴は

  • CPU負荷が小さい
  • GPUを直接効率よく制御できる
  • マルチスレッド対応
  • 高速描画
  • 大規模モデルに強い

という点です。Vulkanを採用することで、

  • モデル回転
  • パン
  • ズーム
  • 断面更新

などが滑らかになることが期待されます。要するに、

高性能価なグラボの恩恵を享受できるようになる可能性がある

ということです。画面更新をGPUに負担させることでCPUへの負荷を下げて、より効率的なデータ処理がなされるようになるはずです。

Vulkanを有効にするには?

現時点ではVulkanに関する特別なユーザーインターフェイスはなく、Revit.iniを直接修正するしかありません。といっても簡単なものです。

Revit.iniをみつけよう

Revit.iniはAppDataフォルダにあります。以下の一文をエクスプローラのアドレスバーに張り付ければすぐに見つかります。(一度はRevit2027を起動する必要があります。)

%APPDATA%\Autodesk\Revit\Autodesk Revit 2027

このフォルダ内のRevit.ini(拡張子が表示されていない場合は種類が「構成設定」になっているRevitという名前のファイルです)をメモ帳で編集するのですが、念のためにコピーを取っておきましょう。

Revit.iniをメモ帳で開き、[Graphics]セクションを検索します。そして[Graphics]セクションに

EnableAcceleratedRevitGraphicsVulkan = 1

の1行を追加します。
Revit.iniに追記

そして上書き保存し、Revit2027を起動します。

機能しているか確認

Revitを起動したら、何らかのファイルを開き3Dビューを表示し、アクセラレーテッドグラフィックスをオンにします。
3Dビューを開き、アクセラレーテッドグラフィックスをオンにする

そしてジャーナルファイルを確認しましょう。ジャーナルファイルは次の位置にあります。これもこの文字列をエクスプローラのアドレスバーに張り付けて移動してください。

%LOCALAPPDATA%\Autodesk\Revit\Autodesk Revit 2027\Journals

そして日付で降順に並べ替えて、最新のジャーナルファイルをメモ帳で開きます。次のような文が見つかればVulkanが機能している証拠です。

0:< ARG Configuration:
0:< Mode: Vulkan Hardware
0:<Hardware Acceleration: ON
ジャーナルファイルを確認しよう

Vulkanへの対応からみえること

Revitはざっくりいうと「計算70%、描画30%」のソフトです。Vulkanを採用することで主に描画部分が高性能化されるので、全体としては体感できるほどの効果は得られにくいかもしれません。
しかしながら、このVulkanへの対応はAutodeskがまだRevitのベース機能の改善をあきらめたわけではない、という姿勢を示していると私は考えています。Vulkanへの対応と一口で言っても簡単なことではありません。多くのリソースを割いてVulkanへの対応を始めた、という事実が重要で、将来はよりサクサク動くRevitが実現するかもしれません。